「忖度脳」という名前は本屋さんで考えました。

ティッシュケースなのに「忖度脳」なんて、ヘンテコな名前だとお思いでしょう。しかし、いろいろ考えた末にこのような名前になりました。大真面目にやったことが、結果として皆に笑われるということもあります。それはそれでいいのです。弊社は、不要なもの・無くても困らないものを真面目に作る会社ですので。

私は雑貨をデザインしながら、アートだの民藝だのと言っておりますが、最近はマーケティングも勉強しております。より多くの人にこの作品を知っていただくためには、マーケティングも大切だと考えたからです。

そしてとある著名な方のお話で知りました。「名前を変えるだけで爆発的なヒットとなる商品もある。例えば通勤快足など。」

なるほど。だったら今回の作品は、しっかり名前を考えてみようと。

でもなかなか思いつくものではありません。頑張ってみましたが、すぐにあきらめました。

「やーめた！」と思い、気晴らしに本屋さんへ行きました。

本屋さんの書棚を眺めていると、ふと思いました。「結構似たようなタイトルが多いなぁ。出版社も大変だなぁ。」と。でもそこは、私とは違うはずです。出版社は本を売るプロの方たちが考えに考えたタイトルのはずです。そう、「売れそうなタイトル」を考えた結果、似通ったものになっているのだと。似ていると売れないのではなく、似ているから売れる。なんとなく「なじみ」があるから売れる。そういうことなのではないかと。

そうやって改めて書棚に目をやると、◯◯力、◯◯シフト、◯◯フルネスなどが目に入ってきました。

なるほどこれは、かつてサザンオールスターズの桑田佳祐が、そのときに大ヒットしていた「勝手にしやがれ」と「渚のシンドバッド」を合体させて「勝手にシンドバッド」というタイトルにした、という伝説。そんな、ちょっとおふざけとも思えるようなタイトルで、見事にヒットしました。これは波紋堂としても、一度実験してみなければならない。そう考えて、同じようなタイトルの付け方を考えてみました。

「忖度」というキーワード、以前は知る人ぞ知る難しい言葉でしたが、今は皆の知るところ。少し皮肉のような雰囲気すら感じる言葉となりました。

メタルティッシュケースのデザインを考えたとき、「後ろが丸見えっていうのも、どうか」と思いました。でも試作を作って、自分で暫く使ってみると、これが意外といい。パッと見もスッキリしています。買ってきたティッシュの箱をそのまま置いておくよりも、かなりスタイリッシュに見えます。何と言ってもティッシュの入れ替えが楽！！

でも、それでも、何か引っかかります。。表から見ていても、裏側のことが少し気がかり。全然問題ないのですが、なんとなく気がかり。。そう、人が人を忖度しているときの状態に似ていたのです。目でその姿を見ながらも、頭の中ではその裏を勘ぐる。人間ですから、社会と関わり合って生きなければなりませんから、しょうがないのです。ときには忖度も必要。

結果、全然流行りませんでした。

それはそうですね。「どこの馬の骨だか」の小さい企業の商品です。でもこの多大な仮説のもとに、人知れず行われた実験。結果をこうして皆さんにお届けできるだけでも有益だと考えます。

ちなみに「忖度脳」の他に候補になっていたのは以下のとおり。

• 忖度力
• 忖度シフト
• 忖度フルネス
• 忖度が9割

全部試してみたいところですが、あまり名前がコロコロ変わるのもよくないと思い、「忖度脳」に決めました。

いまのところ「スベった感」が強いですが、当面はこのまま進んで、時間の経過によりどのようになるのか、観察していきます。また変化があれば、ご報告致します。

メタルティッシュケース「忖度脳」は、名前からして奇抜だし、形もヘンテコ！とお思いになるかもしれません。でもこの形状、表側はティッシュケースとしてごく自然な形です。一見、堅実なデザイン。でも裏側には思い切った開放感。それがこの「忖度脳」の魅力のひとつです。

すこし理屈っぽい説明が多くなってしまい申し訳ございません。「理屈っぽいのキライ！」などと言われそうですが、もう嫌われても、面倒くさがられても、後へは引けません。ご理解いただける方が一人でもいらっしゃれば、それだけで嬉しいことです。そういう方へのメッセージとして、日々頑張って参ります。今後ともどうぞよろしくお願い致します。