波紋堂の作品は、精密板金加工で作られています。
波紋堂の作品は「精密板金加工」という工法。何しろ「板金雑貨といえば波紋堂」などと標榜してますから。
板金加工といっても、『精密』なやつ
単純に「板金加工」と言うと、車のボディーや空調ダクトなど、いろいろあります。それらは同じ板金加工でも、波紋堂の作品とは随分違う世界です。大きかったり、曲面があったり、トンカチでトントン叩いて延ばしたり。まさに職人さんの腕がモノを言う世界です。
それと比べると「精密板金加工」はもう少し新しい感じです。結構デジタル化もされています。『精密』というだけあって、0.1mm単位の精度で金属の板を切ったり曲げたりします。最近は減りましたが、今でもデスクトップPCの筐体などはこの工法で作られているものがあります。背面が金属になっているものは、おそらく精密板金加工品の筐体です。
切る。曲げる。それだけ。
精密とは言え、なんでもできるわけではありません。いえ逆に、基本的には「切る」・「曲げる」しかできません。「切る」はつまり「穴を開ける」という意味になります。
でもいろいろ説明しても長くなってしまうだけです。百聞は一見に如かず!
まず「切る(穴を開ける)」動画を見つけてきましたのでどうぞご覧ください。↓
これはタレパン(タレットパンチプレスの略)というマシンです。最近はこれをレーザー加工機で行うことも多いようですが、波紋堂はあえてレーザーカッターを使用してません。
そして「曲げる」動画も見つけてきました。(YouTubeは偉い!こんな動画もあるなんて!)
これはベンダーというマシンです。重要なのは、「曲げる」と言っても直角90度しか曲げられません。強いて言えば、90度以上(100度とか135度)も曲げられますが、稀なケースだと思います。
このマシン、下には「受け側」としてV字型の溝(ダイ)があり、上には「押し側」として金型パンチがあります。(パンチはなんとも表現しづらい独特な形です)。ダイに板を置いて、パンチを押し付けて、直角に曲げる、というマシンです。ただそれだけですが、人力でやると大変な重労働。しかも0.1mmの精度となると、余程の鍛錬が要求されそうです。
タレパン、そしてベンダー。どちらもCADで設計したデータを、実際の金属の板に反映させることができます。そういう意味では、レーザーカッターや3Dプリンタなどと変わらないように思えるかもしれません。でも実際にこの巨大なマシンを目の当たりにすると「だいぶ雰囲気が違う・・」と感じることでしょう。私の実感としては「やっぱり金属は固かった。。」です。
なぜ金属、なぜ精密板金加工に着手したか。
これは本ホームページの「story」にもあれこれと書いてます。
私が金属に着目したのは、まずは直感的にそう思ったから、ということがあります。でも直感だけで起業するほど、無謀な人間ではありません。なぜ金属なのか? 紙や布でもいいんじゃないか? など、いろいろと考えました。
100円ショップで買い物をしていたときにふと思ったのです。「100円ショップは独特な匂いがするなぁ。このツーンとする匂いは何の匂いだ?」と。そしてあれこれ歩き回って気付きました。「そういえばプラスチック製品が多い。そうか、多分その匂いだ」と。一度気になったら、もう気になって仕方ありません。
街にはいろんなお店があります。百貨店、スーパー、本屋さん、洋服屋さん、靴屋さん。。その中でも、特別にプラスチックが多いのは100円ショップであることは間違いありません。
そして、自分の部屋を見渡してみると、どれだけ100円ショップの製品が多いことか。。つまりプラスチック。。
そんなモヤモヤを抱えながら生活していた、そんなある日、仕事で出会った「精密板金加工」という工法にピンと来たのです。「100円ショップにあるプラスチック製品をこれで作ったら面白いんじゃないか?」と。
もちろんその他にもいろいろ考えましたが、そのようなキッカケで「精密板金加工」というものに取り組もうと思い始めました。
初めてみると、これがまた楽しい
プラスチック製品は本当にいろんな形を作れます。でも板金加工は、切る・曲げる、だけです。苦労して作った原案の図面も、業者様からは「無理です。できません。」とキッパリ断られたりすることもあります。作りたいものが作れない、そんな苦労も沢山あります。でも、だからこそ楽しいのです。世の中、簡単なものはすぐにつまらなくなり、難しいものはだんだん楽しくなるものです。
でも実は私、製造方法についてあまり詳しくなり過ぎないようにしようと思っています。それは、あまり詳しくなると本来作るべきものを見失うかもしれないからです。技術力の高さを披露をしたいわけではありません。元々(別の分野ですが)技術職を17年も経験しております。離れてみて思うのは、技術力は想像力を邪魔する、ということです。(これは人それぞれ考えは違うと思います。「私の場合はそうだった」ということです。)
業者さんの協力あってこそ
たとえ私がそんな突拍子もないことを思いついたとしても、一人では何もできません。しかも、もっと「普通な感じ」の製品を作ればいいものを、なんだかまた意味不明というか、ニッチというか、変わったものを作ろうとしてしまう私の性質。そんな私の事業に付き合ってくれる板金加工業者様がいるのです。本当に有難いことです。いつもいろいろとご協力をいただき誠に感謝しております。
そんな業者様のためにも、もっと波紋堂のことを皆様に知っていただき、製品がたくさん売れるように頑張らなければなりません。何しろ、売れなければ何にもなりません。
まとめ
さて、精密板金加工のこと、少しお分かりいただけましたでしょうか。
波紋堂は雑貨を作って販売する会社としてスタートしました。でも私の変な性質のせいでしょうか、いつの間にかアートの道へ迷い込んでしまいました。雑貨なのに、そして板金なのに、民藝とかアートとか言っております。無理にそういったカテゴリーを決める必要もないとは思いますが、でもご購入を検討されているお客様に少しでもわかりやすくお伝えできればと考えております。
そしてこの「精密板金加工」は、とても制約の多い工法です。作りたい物、作りたい形は、そうそう簡単には作れません。でも、だからこそ、いままでに見たことのないような、独特な形状が生まれてくるのです。この魅力を一人でも多くの方々にお伝えできればと、日々努力して参ります。