精密板金加工業に新しい価値を生み出し、その技術を残していきたい。
一般に「板金加工」と言うと、車のボディー。どこかにぶつけて凹んだら、板金屋さんに修理してもらいます。でもその板金加工とは違います。波紋堂の製品(作品)は「精密板金加工」です。その名のとおり、精密です。0.1mmの精度で金属の板を加工する技術を使っています。
消えてしまいそうな産業
昨今は起業を目指す若者がたくさんいて、とても頼もしい。将来が楽しみです。でもこれから起業する人の中で、「精密板金加工の会社を起こしたい」という人は、まずいないでしょう。日本の製造業は衰退していく一方です。働いている人はオジサンばかり。中にはオジイサンも。年金受給者も珍しくありません。
もう20年ほど、衰退モードから抜けきれないまま、瀕死の状態で今に至っています。一時期、「町工場の高い技術」に注目が集まったり、日本のものづくりを賛美したりという動きはありましたが、結局歯止めが効きませんでした。
それでもギリギリ生き延びているのは、海外生産に依存できない事情のある、医療機器、工場(たぶん原発系?)、防衛関連機器があるからです。税金が投入されている分野です。
少しは若い人もいますが、おそらく渋々後継ぎとなった創業者の二代目、三代目ではないかと思います。
ギリギリの経営は、考える余裕がない。
そんなカツカツの業界ですから。なんとか顧客からお仕事をもらうために、社長は走り回り、社員は安い仕事を夜までコツコツと働いています。働き方改革には賛成しても、現実が追いつきません。背に腹はかえられぬ、です。
もうここまで来れば、諦めるか、起死回生を図るか。。
でもそれすら考えている余裕がないのです。今月か、せいぜい来月のことで頭がいっぱい。これが現状だと思います。
最近、偶然観た2本の映画。
突然、失礼いたします。映画の紹介です。
ひとつは「フラガール」
もうひとつは「リトル・ダンサー」(原題:Billy Elliot)
どちらも、本当にいい映画でした!!
そして急に映画を紹介してしまい、失礼いたしました!!(アフィリエイト目的ではありません。)
この2つの映画は「ダンス」という共通点があります。
そして実は、もう一つ重要な共通点があります。
それは映画の舞台が「衰退する炭鉱」である点です。衰退する業界のお話。。
ジワジワと衰退する業界。その底辺で働き、経営者に翻弄される頑固な親。そこから外に飛び出そうとする子供。激しくぶつかりあう意思。果たして、人間が生きていく上で本当に大切なことは何だろうか?と考えさせられる映画です。
はい、ようやく繋がりました。まさに昔の「炭鉱」と今の「製造業」は似ているのです。
炭鉱のその後(つまり今の状態)を見れば、製造業の未来も予測できます。例えば夕張など。。
そんな現実、見たくもない!という方もいらっしゃるでしょう。そう言いながら、漫然と20年過ごしてきたのではないでしょうか。
先々を読むと、いまやるべきことが見える。
思いっきり悲観的な予測で申し訳ございませんでした。でも、冷静に判断したとしても、日本の製造業は消えない程度に消え、死なない程度に死んでいくと考えています。
でも私は、わずかでも残すことはできないだろうかと考えました。ものづくりの業界で、いろんな人と出会い、よい思いでも沢山あります。それが全部消えてしまうのはもったいない。
細々とでも、続けることはできないだろうか? 私にも何かできることはないだろうか? いろいろ考えました。
そして起こした行動が、この「波紋堂」です。
もちろん、これまで製造業に関わってきて、業界がこのようになってしまったことには大きな反省もあります。身に染みて感じたことも沢山あります。私のような人間が絶対にやってはいけないのは、「高い技術力を目指す」ことです。よく「日本のものづくりはスゴイんだ!」などと賛美しているのを見かけますが、それは恐らく、ものづくり業界以外の人の声です。なぜなら、高い技術力はあっという間に真似され、追い抜かれるからです。もし日本が高い技術を目指すなら、大学の研究費をどんどん増やすことの方が大切だと思います。
では、製造業が高い技術を目指さないのであれば、いったい何をすればいいのでしょうか?
文化に注力。
見ていただければお分かりになるかもしれません。
波紋堂が大切にしているのは「文化」です。アートやデザイン、更に言えば「思想」です。
これは簡単に海外の企業には真似できません。いや、似た様なものはすぐに作られ、すぐに追い付いてくるでしょう。
でもしかし、たとえ追い付いても追い越すことはできません。文化ですから。
日本の製造業の生き残る道。それは他にもいろいろあるかもしれません。でも私にできることは何かと言えば、文化に注力することです。そして実行に移しています。もちろん、もっと多くの方々に沢山購入していただかないと、まったく企業としてはやっていけない状態ではありますが。
波紋堂の活動がひとつの失敗例になっても構わないのです。波紋堂の屍の上を乗り越えていく人達が現れることの方が、私にとっては大切なことなのです。
まとめ
さて、波紋堂が何を目指しているか、お分かりいただけたでしょうか。ちょっと暑苦しいと思った方もいるかもしれません。あるいは、特にご興味のない方も沢山いらっしゃることでしょう。そして頑固な職人さんからは「ふざけるな!」と叱られてしまいそうです。精密板金加工は主に産業機器で使われる技術ですので、立派なものを沢山作ってこられた方にとっては、オフザケにしか見えないかもしれません。でも私なりに考えたことを、私にできる範囲で、実際に行動していることです。
どうか今後とも、この活動の成り行きを皆さんで楽しんでご覧いただければと思います!!
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